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■■■ ナルトとサクラの愛の話ナルト受けWebアンソロジー『君のこととなると』投稿作品 ぱくり、とあんみつを食べる。 口中に広がる甘味にサクラの頬が緩むのを見ながら、一口。甘さ控えめの小豆にシロップがよく合う。 「あのさ」 「なに?」 「こーゆーとこ見られたら、まーた付き合ってるって言われたりしてな」 へらり、と笑ってみせると、サクラは白玉を口に放り込みながら「言いたい奴には言わせておきなさい」とのたまった。 「流石サクラちゃん、格好いい」 「褒め言葉と受け取っておくわ」 ぱくり、ぱくり。向かい合ってあんみつを食べる。近況をぽろぽろ挟みながら、他愛無いお喋り。 傍から見ればデートなのかもしれないが。 「……だって、ねえ。もう恋とかときめきとかないわよ、ナルト相手に」 「そうそう。どっちかってーと、戦友?」 「せめて同志にしといて」 弱さもずるさも汚さも知っている。背中を預け、時にもたれかかり、たまに手を繋ぐような関係。 きっとお互いを選んだならば穏やかに、ただ柔らかな慈しみの中で過ごしてゆけるのだろう。 「でも、あんたの恋人に見られたら厄介よね、確かに。何気に嫉妬深いんだもの」 「サクラちゃんのカレシだってそうだろ」 だが燃え上がるような恋情も、狂気じみた執着も、灯火のような情愛もそこにはなく。 「てかさ、カカシ先生いまだに格好つけようとするんだってばよ。歳の差あるし、仕方ないんだろうけど」 「同年代だったらなんなの。私のなんて朴念仁でブラコンでKYよ」 「でも」 「うん」 「────好きなんだよね」 目を見合わせて、噴き出した。 「愛よね」 「愛だよな」 愛している。そして君も、愛している。恋とは違う形でも、唯一へと向けるものではなくても。 きっとそれが運命ってやつなのだ。 |